3日間にわたる電気化学会@ウェブが終了しました。
私が座長を務めた生物工学研究会の「温故知新セミナー」での相澤益男先生の特別講演には大変感激をしました。
「生物は汲めども尽きぬ創造の源泉」というフレーズを軸に、生物電気化学とは何であるのかという本質から、どのようにして生物に学び新領域を拓いていけばよいのかまで、大変分かりやすく講演してくださいました。
特に心に残ったことが2点ありました。
ひとつめは、「今後日本が世界に向けてリードすべき、できる強みの発想、領域などがあれば、若い人へのメッセージも含めて」という質問に「研究する人が夢中になるアイデア」というキーワードでお答えになり、「研究費を採るためのアイデア」には警鐘を鳴らされたことです。改めて考えればこの警鐘は当たり前のことですが、日々、研究費獲得にあくせくしている身には目が開く思いでした。研究費配分機関から応募のお題が出れば、いかにそれにマッチした申請書を書くかが重要で、採択されても本当にそれは自分がやりたい研究なのかどうか、ということはよくあります。このことを他の研究者に話したところ、アイデアを探す時間と金と余裕のない現状があり、その理由として
・PIはラボを維持するため、若手はポストを獲得するため、急いで拡大再生産の道に載らないと、競争に勝てない。
・学生もKPIの達成ばかり求められていて、指導する側も疲れる。
という問題を指摘されました。改めて日本の科学技術力の回復環境が整備されるにはほど遠いことを感じました。
ふたつめは、私の研究分野である「化学センサ」というコンセプトは日本から世界に発信されたものであり、IoT時代を迎え「生物に学ぶという発想」でセンサテクノロジ×DXによる大躍進が期待できる、ということでした。化学センサは物理センサと比較して実用化が難しく、特にバイオやヘルスケアへの応用が期待されながら、なかなか「次々にいろいろな製品が出る」というふうにはならない現状があります。このことに暗い思いを感じていましたが、先生の言葉に勇気をいただきました。ポイントとして話されたことは、電気化学にこだわらないこと、デバイスづくりだけに終始せず、どう応用するのか、という視点で考えること(本当に今問題なのはデバイスなのか?)、応用のために他分野の融合をすること、でした。頭では分かっていても、実践できていないことばかりです。
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